失活歯(しっかつし)とは、神経が死んでしまった歯、または神経を抜いた歯のことを指します。
通常、虫歯の進行や外傷によって歯髄(歯の神経と血管)が壊死すると、根管治療(神経を除去し、内部を消毒・充填する処置)によって歯を残します。
しかし近年、失活歯が人体に及ぼす影響について、さまざまな研究や議論が行われています。
本稿では、失活歯の特徴、人体への影響、そしてその対策について考察します。
- 失活歯とは?
健康な歯は、歯髄から栄養を受け取り、免疫機能も持ち合わせています。
しかし、歯髄が壊死したり、根管治療で神経を除去すると、歯は「死んだ状態」となります。これが失活歯です。
失活歯が引き起こす可能性のある全身疾患は、**歯原病(しげんびょう)**と呼ばれます。
歯学博士・中島龍市先生は著書『歯原病』(現代書林)にて、失活歯と健康の関係を詳しく解説しています。私も先生の講演を学会で拝聴し、特に以下の点が印象的でした:
- 歯科大学では失活歯について学ぶが、歯原病についてはほとんど教えられていない。
- 失活歯は70%以上の確率で歯原病を引き起こしている。
これは非常に衝撃的な内容です。もしあなたが根管治療を受けて失活歯を持っている場合、何らかの体調不良があるときには、歯原病の可能性を考慮することが必要かもしれません。
- 失活歯の影響と症例バイオペーストを取り扱う一部の歯科医院では、失活歯の抜歯を積極的に勧めているケースがあります。
実際、患者の体験談として以下のような報告があります:
- 酷い生理痛が改善した
- 原因不明の倦怠感が解消された
これらの例からも、失活歯が体調不良の一因となっている可能性は否定できません。
また、アメリカ・テキサス州のジュリー・テナント医院では、高濃度ビタミンCやグルタチオンの点滴治療を提供していますが、失活歯がある患者には抜歯しない限り治療を行わない方針を取っているそうです。
これは、失活歯が健康に与える悪影響を重要視していることの表れです。
- 失活歯と医療の課題
一方で、歯科医師にとって「失活歯が原因で体調が悪い」と判断するのは非常に難しい問題です。
仮に医師が抜歯を勧めても症状が改善しなければ、「健康な歯を抜かれた」として訴訟に発展するリスクがあります。
実際、かつては1本の歯に対する損害賠償額は約115万円とされていましたが、近年では150万円の判例も報告されています。
こうした背景から、医師が患者に対して抜歯を強く勧めにくい現実もあります。
だからこそ、患者自身が正しい知識を持ち、歯科医師と十分に相談することが重要なのです。
- まとめ
アメリカでは、1本の歯の価値は約500万円とされており、28本すべてを換算すると約1億4000万円にものぼります。
これは、歯が全身の健康にどれほど大切かを示す象徴的な数字です。
結局のところ、大切なのは
**「歯を守るための毎日のケアと定期的な健診」**です。
歯は一度削ると、そこから再度虫歯になりやすくなり、やがて神経を抜くに至ります。
そうして生まれるのが失活歯です。
痛みを取る治療が、かえって健康リスクになることもあるのです。